宮部みゆきの現代ものは私にとってはグッと引き込まれるものとそうではないものとの落差が激しい。
この本は(めちゃくちゃ尊大な言い方だけれど)引き込まれにくいほうのもの。
「模倣犯」のようなセンセーショナルで悪意に満ちた人物を炙り出す書き手。
そんな宮部みゆきもその世界に居続けると精神的にマイッてしまうんだろうな。
確か、あとがきにもそう書かれていたような。
不動産屋夫妻とか、高校の鉄道部連中とか、親友のテンコのようなひとは私たちの身近にいるような感覚で書かれているけれど、現実はそんなひとに巡り合うことは幸運なひとにしか訪れないだろう。
主人公のハナちゃんのようなピュアな高校生が今の世の中にどれほどいるのか?
片手に余るほどしかいなんじゃないかと思える一方、高校生のころにしか抱けないストレートでイノセントな感情は心地よいもの。
ハナちゃんと柿元順子のお互いの気持ちは「恋」と呼ぶには淡く。
「友情」と呼ぶにはふたりの心は近く。
そんな女性の存在っていいよなあ、と。
自分が高校生くらいのころにこんな不思議な友情恋愛をしていたらどうなったかな、と空想してみた。
結局再会することもなく、いつのまにか忘れていくんだろう。
この本の結末もそのように結んでいるし、お互いがそれぞれの鉄道を選び、駅に立ったり降りたりを繰り返していくんだろう。。
この本と平行するようなタイミングで重松清の「疾走」を読んでいたので、頭のなかがあっちこっちと善意と悪意を行き来するのが激しかった。
何せあちらとこちらでは主人公が対極にある...。
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