2019年1月22日火曜日

疾走(下)

上巻を読んでいる時点で、頭の中心ではわかっていた。
『シュウジは下巻になっても境遇が上向くことはないんだろう』と。

「くちぶえ番長」とは違うんだ、人と人はいつか、どこかで善意で繋がることができるなんてことは夢物語なんだと。
それでもなお、その善意に満ちたひとが現れてくるんだと信じていた。
神父さんは善意に満ちたひとだけど、彼はシュウジに経済的援助をすることもないし、精神的支柱のような存在でもない。
シュウジに救いの手を差し伸べる存在はエリなんだろうけど、彼女と繋がることはなさげだなあ、と思いながら読む。

下巻でもっとも強烈だったのは新田の登場。
彼の圧倒的なバイオレンスとセクシャル、読んでいるとその情景が目に浮かびとても気持ち悪く、自分の心の居心地も悪い。
なのに読み進めてしまう筆の巧みさ。

シュウジ、15歳くらい。
自分の15歳のころと重ね合わせてみると、ツテもない大都会でたった一人で生きていこうとする姿に加えてあまりにも悪意に満ちたタフな現実が相まって読んでいて涙が流れるほど。
もう止めてくれ、と。

そしてエピローグ。
上巻から書かれてきた幾つもの伏線たちが回収されて救いのある結末、それはそうなんだろう。
作者にも止めることができない、タイトルどおり作者もシュウジと共に疾走してきたのだろうから、この結末にならざるを得なかったのだろう。

でも。
あまりにこの結末は悲しい。

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