2012年11月29日木曜日

瞳の奥の秘密

原題「El Secreto de sus ojos」

アルゼンチン映画、2009年のアカデミー賞で外国語映画賞を受賞した作品。
カルチョスタジアムを空撮(さすがカルチョの国!!)、そしてスタジアムへ寄り、フィールドの中へ、そして観客席へ、犯人捕獲へと映していくシーンは圧巻。

映画紹介サイトで予告編を観て以来、機会があれば観たいなぁと思っていた作品。
「目は口ほどに物を言う」という諺があるように、映画での演技の要は台詞の言い回しだけでもなく、目でどこまで語りかけてくるか?ですから。
予告編で観たのがどの部分だったのか、もう今は思い出せないのだけれども「瞳が訴えかけてくるパワー」に惹かれたことだけは憶えている。

思いもかけずに上映されることが決定し、仕事のスケジュールとプライベートのスケジュールが空いていたので、躍起になって鑑賞した。
当日は物凄い雨降りの天気模様、出かける気分を削がれながらも、この機会を逃せば二度とこの作品をスクリーンで鑑賞できる機会は訪れない!!と言い聞かせながら家を後にした。


主人公ベンハミンと想われ人イレーネ
主人公ベンハミンと相棒パブロ
被害者と加害者
主人公と加害者
主人公と被害者

登場人物の感情が「瞳」によく現れているなぁ、と思う。
物語、展開自体は土曜ワイド劇場とか火曜サスペンス劇場とかとそんなに大きく変わるわけではないのだけれど、結果に至るまでの経緯に幾つかの伏線が張られていて、結末にはまんまと騙されたクチ。
且つ、驚き。でも直後に納得。と頭は回転しながらもスッと入っていく感触が心地よかった。

25年前と25年後を同じ人物が演じているのだが、それが違和感なく受け入れられた。
SFXなどの技術とは無縁の作風だからメイクアップの賜物なんだろうなぁ、演じ手の実年齢はどちらに近いんだろう?なんてことを鑑賞後に考えてみた。

登場人物の人物描写が丁寧に描かれていて、後半になればなるほど、グイッと身を乗り出しながら鑑賞していた。
無残な死を遂げてしまう相棒のパブロ(米国で演じるのであればダニー・デヴィートあたりだろうか?)の存在が重たくなりがちな殺人ミステリー作品をフッと軽くさせてくれる

この作品を鑑賞してハシゴをするつもりだったのだが、余韻に浸りたくてハシゴを諦めた。
まだ明るさが残っていた冬の太陽はすっかり落ち、雨はあがり、空には薄っぺらになっている月が登っていた。



2012年11月26日月曜日

アウトレイジ ビヨンド

柳の下の泥鰌になって、前作は未鑑賞なのに、いそいそと鑑賞に赴いた。

寛政の改革をご存知だろうか?
賄賂政治の田沼政権から、奥州白河出身者の松平定信がありとあらゆることに清廉さを希求した改革
後の狂歌に「白河の清きに魚のすみかねてもとの濁りの田沼かひしき」
と、言われた

バブル時代を田沼政権として、昨今の法令遵守至上主義を寛政の改革だと、個人的には感じている。
ありとあらゆることが色んな人が法令やルールで定めているのだが、相互間で通じているわけではない。
一方で奨励し、その一方で抑制する、そんな法律・ルールは気づけばいくらでも存在している。

私は、企業に属する者で、様々な省庁から発せられる法律を元にした社内ルールを守ることが求められている。
遵守が最優先とされているが、時としてそれは相手の為にならないこともある。
「法令の目的は何?」「その本質は今の状況を想定して作成されたものではないでしょ!」
と、いったものが発生するたび、それでも遵守を求められて、私の精神や肉体は疲弊していく。

そんな者にとって、法の外の世界は憧れに映る。
「濁りの田沼」を全否定することはないじゃないか!
法を破りたいとは思わないけれど、法が制定された趣旨から逸脱するような状態を招くのであれば破ってもいいと思うのだ、緊急避難措置として。
こんな状態に遭遇したとき、私は「めんどくさい」とブツブツ言って昇華させて行っているけれど、本当に昇華させることは「バカヤロー」と叫ぶことだ。
そう、私は善良であることに疲れている。
だから善良ではない世界に浸りたかった。

残念ながら法外の世界でも仁義や慣習とかで縛られており、その洗礼を浴びたのが中尾彬が扮するヤクザ。
その対極にいるのがたけし扮する大友
彼はあらゆる縛りから解き放たれており、自由に生きている。
「何が正しいか?」
「あるべき状態は何か?」を理解して生きている。
彼が生きる様に憧憬を抱く。
多分にご都合主義な展開でスーパーヒーローに映ってしまったのは減点要素だと考えないといけないけれど…。

第三弾が製作されるのであれば、大友の獄中での振る舞いにスポットを当ててみてもいいのではないかと感じる
「アウトレイジ ビットウイーン」というタイトルになるけれど(笑)

音楽では、張り詰めた緊張感を演出するために鈴木慶一のギターがよく似合ってた。

映像では、加瀬亮演じるヤクザの末路の姿が強烈だった。