2013年5月23日木曜日

闇の穴

7篇の短編集
どれもこれも、引き込まれてしまう内容で、とても気に入った短編集。

前半2作、よく読んできている藤沢作品の典型的作品
私にとっては、これが藤沢周平作品のプロトタイプでもある。
中盤3作、場面は日本だけれど、洋画を鑑賞しているような錯覚に陥る
後半2作、大人のためのおとぎ話(アダルティな内容もあるけれど、それ以上に摩訶不思議さ)

2011年に映画化された「小川の辺」は良作の一篇ではあるものの、それ以上に私にとってインパクトが大きかったのが中盤の3作
「闇の穴」、舞台は江戸で、主人公は裏店のおかみさん。
読み進めていると不思議な感覚に襲われる。
舞台は異国のスラム街、主人公は薄倖なダウンタウンマダム。
胡散臭い悪人らも、目で読んでいるのは江戸時代の日本人でありながら、頭でイメージに浮かぶのは洋画に登場してくる悪役たち
この錯覚はこの作品が特に顕著に感じたけれど、多かれ少なかれ藤沢周平の物語を読むときに襲われる心地いい錯覚。

「閉ざされた口」は、90年代の洋画「依頼人」を彷彿とさせらた。
いや、実際には「閉ざされた口」のほうが執筆時期は古いから、時系列は逆なんだけれども。

「狂気」
これは、読んでいて、自身の中にこんな欲望(今作ではロリコン趣味だけれど、詰まるところ犯罪に結びつきそうな異常な欲望)が眠っているんじゃないだろうか?と、自身の欲望の塊に不信を抱く。
客観的に分析してみて、私はごく一般的な欲望(または性癖と置き換えてみる)の持ち主だと自負しているのだけれど、異常な欲望はフッと降ってくるらしい、ということを何かの本かまたはテレビで知識を吸収した憶えがうっすらとある。
その欲望は
A)誰の中にでも静かに横たわっている のか?
B)誰にでも存在するものはない のか?
どちらなのだろうか?と、考え込んでしまった次第だ。


木綿触れ
小川の辺
闇の穴
閉ざされた口
狂気
荒れ野
夜が軋む



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