2011年11月14日月曜日

沈まぬ太陽(3)御巣鷹山篇

この本を手に取るあなたへ
「人間が、便利な文明の利器を手に収めれば相応するリスクを背負うことにもなる。
私たちは加害者にも被害者にもなりえる確率の下で暮らしていることを肝に銘じて読んでみよう」

遺族の気持ちが分かる、とか、遺族の立場になって考えるとか言うのはあまりにも空々しい、軽々しい、おこがましい。

1985年8月12日から始まったジャンボジェット機墜落事故のnews、当時九州の片田舎に住み、飛行機に搭乗したこともなく、また生涯飛行機搭乗することなんて無縁のことと考えていた高校2年生の私にとっては遠い世界のnewsに聞こえていた。
飛行機になんて乗らないでおこうと思っていたものだ。
この後10年後、鹿児島や宮崎、沖縄そして東京出張で飛行機に乗ってきている。
あの頃、「乗らないでおこう」と考えていたことを忘れてしまっていた。
この本を読んで、事故の記憶が風化している自分に冷や汗が出てくる。
但し、この事故から4半世紀を経過した今でも「ダッチロール」「しりもち事故」「圧力隔壁」といった単語は強烈なインパクトを残し続けている。

「アフリカ篇」とは全く異なる物語。
主人公恩地元が日本へ帰国して11年も経過している。
アフリカ篇を読まずとも「御巣鷹山篇」だけで充分過ぎるほど小説の読み応えはある。
丹念な取材と緻密な構成に「よくもまあ」と、取材の幅の広さと克明な内容に簡単させられる。
中でもアメリカ、ボーイング社での内容には作者山崎豊子の作家根性にひれ伏す。

自動車事故、鉄道事故、船舶事故、この後にも起きた航空機事故、そして原子力発電所事故。
人類は生活を便利にするために、快適になるために機械を製作し、活用し、改良するサイクルを廻しながら事故を防ごうと努力している。
それにあたり、常に「安全」を最優先にしなければならないというごく当たり前のことを、頭に、胸にDNAに刻みつけるテキストとして本書は読み継がえていくことだろう。
万が一本書が軽んじられる時が到来するのだとすれば、人類は機械を製作してはいけない。

第1章 レーダー
第2章 暗雲
第3章 無情
第4章 真相
第5章 鎮魂
第6章 償い
第7章 紫煙
第8章 怒り
第9章 御霊

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