ローマ人の物語の傍らで手軽に読めるものとしてこの本を手に取る。
還暦を迎えてから以降の阿刀田高の作品には絶対的なエロスの量が少なくなってしまっている。
艶福家だったのであろう(?)、オトコとして現役の頃に執筆されていた登場してくる女性はとてもなまめかしく、可憐。
本の中でありながら色気が匂ってくるようだったのだが。
とはいえ、この本は小説家阿刀田高ではなく、古典文学の誘い者としての阿刀田高がゆえの短編集。
この人が書く蘊蓄は実に小気味が良く、嫌味がない。
あ、そうなんだ!と感じ入るような印象を常に抱く。
幾つかの蘊蓄は、或いはジョークも織り込められているのかもしれないけれど。
博学であれば、見える世界は拡大していく。
四十を過ぎて尚、知らないことが如何に多いのだろうか、とため息をつきたくなる一方で、こういった本を読んで知ることの楽しみを満喫できる。
でも、日本人だから印象に残るのは日本の奇談(十二話)
滑稽なのオチで笑ってしまったのが六話
ゾクリとしたのが七話、九話、十話
怖いといっても、オバケが出てくるわけでもないし、怨念の類も薄い。
夜中にお手洗いに行けなくなる型の恐怖ではないので、夜の読書でも問題なかった。
第一話 美しい眼
第二話 蝶の乱れ
第三話 錬金の夢
第四話 ルナール師
第五話 黄土色変化
第六話 風のビリー
第七話 シベリアの闇
第八話 恐怖の谷
第九話 地球は丸い
第十話 黒い血
第十一話 箱の庭を持つ男
第十二話 風洞の女
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