2013年1月9日水曜日

アームストロング砲



四半世紀ほど以前「竜馬がゆく」に感激した。
今になって思えば、幕末史のことが完璧に分かった錯覚に陥っていただけ。
「竜馬がゆく」を読破後、教科書では学んでいないことが書かれている本、歴史の奔流をもっと示してくれる本、坂本龍馬よりも興味深い人物を描いている本を求めて書店に赴いた。
そして手に取った本がこれ。
超一流の人物が登場するわけでもなく、歴史の奔流を示唆してくれるような雰囲気には遠かったこの本をアッサリとスルーして別の本を漁ったことを思い出す。

久しぶりに司馬遼太郎を読みたくて古書店で発見したので、購う。
私の本棚を新潮文庫・講談社文庫・文春文庫の司馬遼太郎の作品が所狭しと占拠しているが、この作品もとうとう仲間入り。
他の短編集で既読の作品が3作ほどある「壬生狂言の夜」「太夫殿坂」「理心流異聞」、3作とも新選組もの。
9作品のうち、新選組が関わっている作品が多い(脇役で登場するものまで含めれば5作品が新選組ものだ)

新選組の歴史評価はここでは省くとして、この短編集の主人公は教科書にも登場してこなければ、メジャーな歴史小説、時代小説にも登場することのないような人ばかりだ。
(例外は理心流異聞の沖田総司くらいか)
功績があるのかないのか?判断に困るような人ばかり。
だから、この本で「少年大志を抱く」ような壮大な物語は紡がれていない。
幕末の巨大且つ高速な時代のうねりの中で、「面」ですらもない、「点」での活動をしたような人たちの物語。

壮大な夢を抱いていた20代の頃には読めなったけれど、40歳を超えてありきたりな会社生活を繰り返している今になってようやく読めたのだろう。
後世になって結果論で「誤った決断・進路を選択している人だ」というのは容易い。
だけれども、あの右も左も信じられない幕末に於いて己の信念を貫いた人を、今も信念すら持てず会社に、社会に流されっぱなの私は笑うことなんてできない。
この人たちも偉大な人だと感じ入る。

長編にもなっている「侠客万助珍談」が気に入った。
豪胆が故に命を縮めた肝付又助の薩摩隼人ぶりに感心した。
「壬生狂言の夜」は大河ドラマ「新選組!」の松原忠司の末路はこの物語へのオマージュが込められているに相違ない。
「斬ってはみたが」、上田馬之助の物語は「竜馬がゆく」で竜馬が剣術修行をしている頃の巻にチラリと登場していた。ようやく積年のモヤモヤがスッキリした。



収録作品
「薩摩浄福寺党」
「倉敷の若旦那」
「五条陣屋」
「壬生狂言の夜」
「侠客万助珍談」
「斬ってはみたが」
「太夫殿坂」
「理心流異聞」
「アームストロング砲」


1 件のコメント:

  1. とても魅力的な記事でした!!
    また遊びに来ます!!
    ありがとうございます。

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