2013年1月23日水曜日

最後の喫煙者


筒井康隆には四半世紀前の大学生の頃、まるで熱病に罹患したかのごとく読み漁ったことがある。
20歳台、30歳台にはこの「エログロ」「ナンセンス」溢れる筒井ワールドとは距離を置き、時代小説・歴史小説方面に親しんでいた。
40歳台を迎える頃から再び筒井ワールドへ帰ってきた。
とはいえ、1年か2年に1冊程度のものではあるのだけれど。
大学生の頃に親しんだ本は全て転居の際に同居していた弟に任せたまま(だからきっと処分されているだろう)
…で、今我が本棚を眺めれば5冊ほど鎮座している。
この「最後の喫煙者」で6冊目だし、もう1冊購入したので7冊目となる、自分が感じているよりも筒井作品を読んでいる勘定になるのに些か驚く。

今になって思う。
10台後半に筒井康隆を読んだことは、今の私の人格形成に少なからず影響を及ぼしているんだろうな、ということ。
それまでの私は「性」の話題はタブーとして振舞ってきたのだけれど、筒井康隆が書くSF・パロディの半分ほどは「性」を扱った作品だ。
そんな作品を読み耽った結果として「所詮、どんなにかっこつけていたってオトコもオンナもヤることしか考えてねえんだよぉ」という考えに至った。
だからといって性犯罪者にまで至っていませんよ。
つまり、人間も生物である以上、生殖に関しては無縁でいられるはずもなく、生殖とは神聖な行為であるということをストレイトに気づかされた。

この短編集の中でも「問題外科」は「エロ」と「グロ」が混在していて気持ち悪い。
読み進めるのも億劫になるくらいのグロさがあり、そのグロの先にエロがある。
生殖と死を隣合せに描かれるのは気持ち悪い。

「ヤマザキ」と「万延元年のラグビー」
歴史を題材とした嘘物語、正攻法で攻めてこられていると思いきや(いや、実は思ってないんだけれど)思わぬところから背負い投げを食らわせられた。
中川清秀へ電話をする秀吉、新幹線で天王山へ向かう秀吉。
桜田門外の変の実行動機が近江牛が食べられなくなったからとする。
こういった「嘘」は思いつこうとしても思いつかないし、凡才にはおよそ思い至らない発想だ。
筒井康隆、恐るべき天才だとつくづく感じ入る。

「喪失の日」
チェリーボーイ必読のドタバタコメディ
既にチェリーボーイ卒業して四半世紀を経た私には、自分もこういった「落ち着きのない時間を過ごしていたよなぁ」と喪失した当時の自分の心の有り様などを懐かしく思い返した次第だ。

【収録作品】
急流
問題外科
最後の喫煙者
老境のターザン
こぶ天才
ヤマザキ
喪失の日
平行世界
万延元年のラグビー







0 件のコメント:

コメントを投稿