2013年1月4日金曜日

女嫌いの平家物語

およそ半年前の夏休みに購入して、都合3回ほど読んだ。
2012年の半分を費やした「新・平家物語」のサイド本として。

コミカルでとっつきやすいカバーに反し、内容はなかなかに難しい。
作者大塚ひかりさんは「源氏物語」に造詣が深いとのこと。
古典に明るい彼女が「平家物語に登場する女性は後世の男性によって都合よく描かれている」と断じている。
しかもその男性はホモセクシャルに相違ない、と。
ホモとまで断言しないけれど、平家物語はその成立の過程で琵琶法師(つまり僧侶)によって手を加えられているのだし、とかく男という生き物は中央に住む女=美人と定義づけたがるものだろうし。
彼女らの実体とは随分かけ離れた描かれ方もされているんだろうと、確かにこの本を読んで気づいたし、彼女らを通じて清盛はじめ男性の登場人物に対して多面的に捉えることができたように思える。

母が主権を握っていた平安貴族時代から、父が主権を握る鎌倉武家時代へと変遷してしまった鎌倉時代に平家の女性が描かれているから、実体が掴みづらい、歪曲されているだろうという説。
読んでいるとそうかもしれないな、と思うところも多い。
千手、建礼門院、二位の尼の解釈は「ううむ、なるほど」と感嘆させられた。
反対に、静と磯の禅尼=祇王、仏御前と結びつけるのは、強引かな、と。
空想することは自由だし、こういう解釈を読むのは平家物語を楽しむ幅が広がる。

この本を読んで感じたことは、登場する女性・男性よりも、平家物語の成立の過程のこと。
歴史が積み重ねられていく中で史実を記録していくことの素晴らしさ。
そして平家物語の出だしの文章に集約されていくのだろう
諸行無常、盛者必衰。
清盛が平治の乱で勝利を収めてスターダムにのし上がってから約20年その間に幾つかの危機に見舞われながら栄え、そして清盛が死ぬ。
その5年後には壇ノ浦で平家は泡と消える
たかだか四半世紀のことなんだと、改めて巻末の年表を眺めている。





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