平治の乱により繁栄を極める平家一門
対抗勢力の源氏は実質滅び、平家による一党支配は武門だけに留まらず本来公卿でなければ就けない政治のポストにも平氏一門が就く。
面白くないのは地位を喪失し隆盛を奪われた形になる公卿ら。
また、かつて祖父が時代に隆盛を極めた院政により権威を取り戻したい後白河法王
法王を常に取り巻くのは公卿。
平家の棟梁清盛のビジョンは宋へ向かい、貿易拠点として福原に目をつけ、京を離れ、政務も離れていく。
不満分子の結合の予兆、肝心なトップは首都に不在
平家の隆盛は外観は華やかな盛りを迎えているが、足元は危うい。
巻の後半には後に平家を危うくする存在の代表として文覚上人が伊豆へ追放され、牛若が鞍馬を脱出する
頼朝がいる伊豆へ流し、牛若が鞍馬を脱出しても、平家に危機感は薄い。
平家は危機管理体制が絶無な組織ではないのだろうか?
平治の乱後一気に駆け登る清盛の成長を評して。
無我夢中で仕事に邁進した後、暫くして上司などから称えられたことのある人なら誰にでも覚えがあるのではないだろうか。
人間のほんとの成長とはたれも気のつかないうちに、土中で育っているものである
人が言いはやすのは地表の茎や花でしかない
(12頁)
清盛の孫が美しかった理由、交配の妙とでも解釈すべきか。
優良のまま退化しかけている生物(貴族のこと)も植物も強靭な野生の生命力(平家のこと)と結びつくと、その配合のもとにはすばらしくみずみずしい生命を開花し出すと言う
(89頁)
先の巻で登場した美少女明日香が祇王
成功者に仕える女の不幸、そしてこの時代の女性の性欲との付き合い方の不幸
心は一つしかないはずのものでありながら、二つの心が自分の中に住んでいたことを思い知る苦悶の怪しさは、産婦の陣痛のように、女性だけがうけて生まれたもののようである。
(120頁)
平安朝の遠い世ごろから、女たちは、女の自由を貞操の限界だけではかなり放縦にされてきたが、結局、彼女たちは貞操だけの自由に今は疲れ果てていた。
もっと広い自由に何か欠けていたからである
(126頁)
清盛は公卿の真似をしたい人物ではない、武家には武家なりのスタイルを築きあげたいと考えていたのだと言う
けれど、華奢風流といい、仏教といい、かれえは公卿の真似事などはしたくもないのだ
みずからの文化を創り出して「六波羅様と言え」と奨励したつもりである。
また、宗教の意義や尊ぶべきことはかれとて充分にわかっていた。
【収録】
昼顔夕顔
鯨
市女笠
額打論
風声
清水寺炎上
一学生
花の聚楽
妓王
君立ち川
仏御前
四人尼
虫一斗
かむろ
車あらそい
九条兼実日記
宋美人
経ヶ島由来
孔雀の卵
文覚配流
よもぎ餠
日蔭の君
鞍馬の遮那王
稚子文状
野の歌
九十九折
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