時代小説が舞台だけれど、中身は推理小説の要素がかなり強い。
読み手はいつのまにか「秘伝の技が誰に伝授されているのか?」という興味を抱かせられる。
中でも家僕の存在に私が藤沢周平に「一本取られました!!」
読み手が最初に抱く「何故家老はその技を受け継ぐ者を知りたがるのか?」という疑問は、コボしながら仕えざるを得ない主人公半十郎と、家老の甥でやんちゃなきかん坊の石橋銀次郎が探し求めた藩士との立ち合いが続いていくうちに、知らず知らずのうちに忘れさせられて、物語の終盤に迎える急展開を目にして「あ!最初に抱いた疑問はこっちだった!!」と。
言葉の使い分けが絶妙だ。
「公」のときと「私」のとき
秘技の遣い手を探り、その相手と木刀で一歩間違えば死に直結する、こういう緊張を強いられるような展開の中で、主人公半十郎とその周囲の人たちが繰り出す東北弁(きっと山形弁なんだろうけど)に、「フッ」と緊張した肩の力が抜けていく。
九州出身の私にとって、東北の言葉はとても田舎臭く感じる(よくも悪くも)し、それでいて、主人公を身近に感じる。
病気を患う妻の存在が藤沢周平らしい
気鬱の病を抱えている妻
そんな妻の回復を願いながらも距離を量りかねる夫(主人公)
夫婦の絆を取り戻す物語でもある。
......。でも解説の末尾に書かれている内容に、「いや、それはちょっと。さすがにそれはないでしょう」と感じた次第。
先にも書いたけれど、終盤の急展開を整理するのが少々大変だけれど、小気味よく読み進められる一冊です。
あ、あと登場人物は名前書いておいたほうがいいかも。
登場人物の大半が剣士で、注意して読めば年齢や特徴も丁寧に書かれているんですけどね。
最初は混乱しました。
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