この本は発売されたとき、日本経済新聞の書籍紹介欄(だったと記憶している)を読んで、発想の面白さに興味を惹かれた。
いつかは読もう読もうと考えていたけれど、人事異動、職種変更、更に職種変更とカメレオン並みの変体をさせられて(そして対応して)すっかり忘れていた。
多分あれから6年くらい経過しているんじゃないかな。
古本屋さんでこの本を見つけたとき、当時のことを思い出しながら本棚から引っ張り出して手に取っていた。
坂本龍馬と土方歳三
どちらも、私にとっては永遠のアイドルであり続ける二人。
2004年の大河ドラマ「新選組!」でも龍馬(江口洋介)と歳三(山本耕史)が京都で過ごすときには旧知の仲だという設定に「そんなわけはない」とブツブツ言いながら、三谷幸喜の脚本にまんまとハマって毎週正座しながら視聴していた。
さて、この本の物語。
上記の日経新聞の紹介時に、私はもっとファンタジー的な要素かSF的要素が盛り込まれているのかと勝手に思っていた。
死の淵に立った龍馬をオートバイに載って歳三が救済に向かうとかね(オートバイの歳三はブラックレインの松田優作をイメージしていただけるといい)
ところがどっこい、時代考証はしっかり為されている。
徳川慶喜の載る籠が誰かに狙撃される。
慶喜は無傷だけれど、狙撃犯は誰か?を突き止めなければ大政奉還が頓挫してしまう。
勤皇側から龍馬、佐幕側から歳三に白羽の矢が立ち、二人して薩摩藩や会津藩を調査(取り調べ)を進めていくというもの。
幕末の知識があれば充分に楽しめる展開だし、作者も折りに触れて丁寧に説明を加えてくれる。
それが、プラスに作用するか、マイナスに作用するかで本への印象が変わってくると考えている。
私は幕末史に19歳の頃から読み続けているので、今更その説明は不要なんだよなぁって感じる箇所がとても多く、辟易してしまった感じは否めない。
そういう文面のところは読み進めるのが却って遅くなってしまった。
だから、今の高校生あたりが受験勉強の箸休めに読んでくれたら知識が身につくんじゃないかと思う。
(女子は源氏物語の漫画をよく読んでいるから古典への理解が早いように)
また、幕末の主要人物がオールキャストで登場してくるので、大味になっちゃったよなぁ感も大きい。
幕末の物語をオールキャストで紡いだ本といえば司馬遼太郎の「十一番目の志士」が挙げられる。
(同書は司馬作品に中で最も印象が薄い本)
作者は非常に盛り上がって執筆しているのだけれど、大きくしすぎて収拾がつかない印象が残る。
西郷は?大久保は?半次郎は?
桂は?伊藤は?
登場してきた人物がこの本の中できちんとピリオドが打てずに去ってしまう展開が物足りない感じを強くしているんでしょうね。
例えが稚拙になるけれど、幼少の頃仮面ライダーやウルトラマンで、オールキャストの回っていうのは予告編ではものすごく面白そうに映るのに、いざ本編を視聴すると、「あれ?」っていう感じに拍子抜けしたことがある(私と同じ世代は頓首してくれると確信している)
それに近いんですね。
両雄並び立たず
これに尽きます。
と、けなしているばかりが感想でもないんです。
作者の五十嵐さんの龍馬像は「竜馬がゆく」からだし、歳三像は「燃えよ剣」からだと、私は感じている。
この二人が同じ本の中で、同じ道を歩き、同じ目標のために動き回るっていうのは、頭の中での活劇が繰り広げられ、とってもとっても楽しい。
そして最後の嬉しい展開。
思わず、涙がポロリと流れてしまいました。
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