結果として1年以上放置していた、塩野七生のローマ人の物語シリーズ再開。
1月後半から2月全部を費やして、この本以外にも塩野七生の「ローマ人への20の質問」と併せて読み進めた。
「カルタゴ」という聞いたこともない国家が登場してくる(←私が無知なだけ)ため、読まず嫌いでいた。
しかし、意を決して読み進めてみると、これほど面白く、ワクワクする物語も珍しい。
ローマを人間に例えると、(作者もおっしゃるように)青年期に著しく成長していく人間のようだ。
そして、ローマとカルタゴの関係を読んでいくと、ふと思い当たった。
幕末から日清・日露戦争の頃までの「日本」と「欧米列強」の関係に近いんじゃなかろうか、と。
それは、民族の事情というより、寧ろ地理的事情によるもが似通っているから感じるのではなかろうか、と。
司馬遼太郎は江戸時代の平穏をもたらしたのは日本国内の内政ではないと、徳川政権を評価しておらず、世界で航海術が飛躍的に高まり、米国には捕鯨という漁場のための補給地として日本の位置づけが都合が良かったから、だと教えてくれた(竜馬がゆく)
このローマにしたって、成長のきっかけは自国の事情ではなく、地理的事情と他国の経済事情が起点。
き
そして、この後ローマは自分よりも強い(軍事力・経済力)他国家を打ち破るほどの実力を培っていく。
その姿は、日清・日露戦争の頃の健全で聡明な明治日本のようではなかろうか、と。
「カラス」の話、非常に参考にすべきエピソードだと思う。
心を聡明に、頭を素直に。
・塩野七生は書いている
ローマ人とカルタゴ人の違いは「他民族とのコミュニケーションを好むか否か」であった、と。
なるほど、日露戦争後の日本はおかしな国家へ変貌していったのは、ここに集約されるかもしれない。
・ローマ人の面白さ
何でも自分でやろうとしなかった。
どの分野でも自分たちがNO1でなければならないとは考えなかった。
ああ、これって柔軟な思考だよなぁ…。
・属州とは?
①統治全権を与えられた法務官がローマから派遣される
②全領土がローマの直轄領
③直接税納入の義務
うへえ、私が勤務している会社(連結子会社)が親会社にされているようなもんじゃないか。
我が社って、所詮属州なんだなぁ…。
・心に留めた文章たち
宗教を信じるか信じないかは個人の問題である。
但し、信じる者が多い共同体を率いていく立場にある者となると、個人の信条に忠実であればよいということにはならない(P72)
昨年再読した、「新・平家物語」で登場する田辺の湛増が鶏占いをするシーンを思い出す、なるほど、と感じ入る文章。
軍の総司令官でもある執政官に対し、いったん任務を与えて送り出した後は元老院でさえも何一つ司令を与えないし、作戦上の口出しもしないのが決まりだった。(P85)
指揮命令は単線であれ。ということ。
あれやこれや介入するような組織は鉄の組織とはならないよな。
勝敗はもはやなったことゆえどういしようもない。
問題はそれで得た経験をどう生かすか、である(P90)
勝敗=結果と置き換える。あるいは失敗でもいい。
目次
序章
第一章 第一次ポエニ戦役
第二章 第一次ポエニ戦役後
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