2012年6月10日日曜日

新・平家物語 火乃国の巻


治承元年、清盛は還暦、頼朝は30歳を超えた頃。

伊豆の頼朝を取り巻いている者達に、新しいムーヴメントが起ころうとしている
若者の血気盛んな団結、恋、老いゆく父母は新しいムーヴメントに呑み込まれていく。
「打倒平家」のスローガンは、平家が憎いわけという理由ばかりではなく、自分たちに陽の当たる場所を求めているような感想を持った。

洛内では、人災により多くの無辜なる民草が路頭に迷い、奪い合う。
貴族は冠位を奪い合い、民を治めることを忘れている
僧侶は利権を院に求めて、民を救うことを忘れている。

この世相は、現在の日本に通じているように感じて仕方がない。
貴族や僧侶を政治家・実業家の類と読み替えれば、どうだろう?


北条政子と北条時政。
政子は頼朝に恋し、許嫁山木を謀ろうとする。
時政は山木へ嫁がせようとするまではぐずぐすするが、山木ではなく頼朝へ嫁がせようと決心する。
その2人を評して、男女の相違点に含蓄。

女は、行うまでは盲目であり、男は事の行われたときからいやおうなしに腹が座る
(230頁)
だから、北条父子の野望の踏み出しは彼女の恋が導火線だったといってよい。
(230頁)

清盛のこと。
結果を知る我らからすれば清盛は政治家おtしては不向きだったと思う人が多い。
では、清盛とは何だったのだろう?というアンサーがこれ

かれは、天性、偉大な道楽者であったといってよい。
(244頁)

当時の世相。この世相を変えることができなかったのだから平家政権は崩壊したのだ。
源氏が打倒平家に燃えたからではない、仮に源氏が立たなければ源氏に変わる別の者が立ち上がり、平家政権を叩き壊すしかない。

地方は原始の野に近いままであり、政治は暴力に動かされ、武力のない人間はすべてあわれなる土民か流民でしかない。
(258頁)
かれら(囚人たち)の素質や環境もよくないが、しかし春の宴舞、秋の管弦とこの世を殿上だけで楽しんで来た古都平安が生んだものだ
(339頁)

山門のこと、今のお寺とは全然異なる、例えていえば暴力団が近い(別の頁でも吉川英治は断定的にそう書いている)
信仰の砦に武力と財力を蓄え、ややもすれば政治的に動く集団があったとしたらこれほど始末の悪いものはあるまい。
(269頁)

【収録】
初暦・治承元年

頼朝のほくろ
政子
虫の垂衣
市に出た馬
初対面
佐々木兄弟
亀の前
雲は遊んでいる
あねいもと
男親
かの女の処理
冬山は燃えやすい
火の国の花嫁
夜の富士
いつくしまの内侍
雪ノ御所
山門猿
土下座陣
「方丈記」断片
菖蒲葺き
虎口
座主流し
怒め坊
弁慶下山記
人里
百面相
鬼若童子

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