美しいラブストーリー。
戦国時代を舞台にして純愛の形を具現化した物語で、総じて言えば知名度の低い部類に入る明智左馬助という武将を登用したことで、戦国時代の純愛を受け入れやすくしている。
左馬助というフィルターを通して明智光秀の人となりを感じることができれば、この本を読んだ甲斐もあろうというものなんだろうが、残念ながら私には光秀という武将を感じ取ることは叶わなかった。
遠藤周作の「反逆」と合せ読むのも一興。
遠藤作品には左馬助は登場してこないけれど、そのほかの登場人物は殆ど同じだから。
荒木村重やその妻多志をはじめ、高山右近など、織田信長によって人生を翻弄された武将らの一生が描く人によって描写や解釈が異なることを知る楽しみはある。
信長の棺から続くミステリー要素のパズルはピースがハマっていく達成感はあるのだけれど、歴史的解釈はパチッとハマってこない。
その乖離幅が読み手の私にとって頁をめくる楽しみには繋がらなかった。
ミステリーなのか、創作小説なのか、歴史小説なのか?うまくピントを合わせることができないままに読み終えてしまった。
この三部作では
・信長の棺で「老い」と「情欲」をテーマにした恋
・秀吉の枷で「虚しさ」と「堕淫」をテーマにした恋
・明智左馬助の恋で「一途さ」と「プラトニック」をテーマにした恋
以上3つの恋が紡がれている。
性欲もある只の煩悩の塊である今の私には、どれにも共感を覚えることができなかった。
作者が執筆したのが70歳台で、読む私が40歳台という年齢の隔たりの要素が共感を得難い要因なのではないかと思う。
もう30年後に読むと、恋物語としてのこの3部作に共感を覚えるのかもしれない。
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