2014年5月21日水曜日

平家物語の女性たち

何かの本で読んだ記憶がある言葉
男性は概ね平家物語に傾斜していく
女性は概ね源氏物語に傾斜していく
なるほどなぁ、と思った。

中学時代に習った「祇園精舎の鐘の声」、当時は流行していたアイドルたちの曲や、アイドル自身に置き換えたりして自分の中に取り入れた。

高校時代に習った「敦盛」、物語は衝撃的だし、文字の並びと音の哀調に恐れ入った。
古文では色んな古典から習っているはずなのに、私の中では敦盛がダントツに印象が強い。

成人して、30代後半に出会った吉川英治の新・平家物語を読み、40代で再読。
平清盛の印象もコペルニクス的転回したし、彼を取り巻く家族の絆を感じた.
その反面の位置づけとして源氏の物語が展開されていく。
ヒットしなかったが13年の大河ドラマ「平清盛」は家族という視点に集中特化すれば、あるいはもっと馴染みの深い番組になったのだろうに、と思う。
05年の「義経」はそのいい例。
(あの時代を描こうとすれば、公家やその周囲を語らなければ清盛たちの意気込みが理解できないのだから、言うは易し、なのですが)

そして、「ビギナーズクラシックス」に手を出し、「女嫌いの平家物語」と冒頭に書いたように男性である私は確実に平家物語に傾斜してきた。
何せ源氏物語に関連する本はただの一冊すら読んだこともない。

アラフィフィに到達した今(最近の私の同級生たちの中で再認識している言葉)、この本に出会う。
永井路子さんの本を読破したのはこの本はが初めて。
(太平記についての本を今「連れ」に借りて?いるのだが、未読)
男性によって運命を翻弄されていった(であろう)女性たちに焦点を当てて、当時の時代背景や用語や古文の解説を交えながら語りかけていらっしゃる。

吉川英治の新・平家物語に登場する人物像を思い出しては追いかけていくような感覚で読む。
新たな解釈があり、同様な解釈があり。
教養がついていくっていうのはこういうことなのかもしれないなぁ、と思う。
もっとも。読んでもすぐに抜け落ちていくのが悲しいですが。

人妻たちの篇が新・平家物語では充分に語られなかった平家に嫁いだ女性たちの気持ちを丁寧に綴られていて楽しい。
トンカツにカラシをつけて食べるとおいしいように。
蕎麦に柚子こしょうを入れて食べるとおいしいように。
基幹となるもの(新・平家物語)に、添えるもの(この本)を添えていくと、更に旨みが増していく。
永井さんご自身及びその周囲にいらっしゃった女性たちの太平洋戦争での強烈な体験と源平時代の動乱、歴史的大転換期に運命を翻弄されていく姿をシンクロさせながら執筆された姿が容易に想像できる。

ただ、静御前が登場してこなかったのは残念。
まぁ、彼女は源氏側の女性ではあるのだけれど。

二位の尼と建礼門院徳子の母子の篇も、鋭い考察でうんうんと頷きながら読む。
時子がドラマに仕立てあげやすいのに対して特子がヒロインとなりにくく、どんなドラマでも影が薄くなっていくのも道理だと感じ入る。
母は強し、その母になれない環境で安徳天皇の国母となった徳子。
その差が壇ノ浦での覚悟として違いが出たというのは的を得ている批評だと感じる。

恋人たち
  祇王 祇女 仏御前
  葵女御 小督局
  千手前
  横笛

妃たち
  祇園女御
  二代后

人妻たち
  小宰相
  維盛の妻
  巴
  大納言典侍(佐)

二人のヒロイン
  建礼門院
  二位の尼 時子

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