2012年3月27日火曜日

ハンター

原題「The Hunter」

決して主役が似合わない男ではないのだろうが(←まわりくどい表現になるところに同意してくれる人がいると思う)、主役の代表作がパッと挙げられない男、それがウィレム・デフォーだ。

80年代には「プラトーン」でチャーリーシーンを引き立て
90年代には「ボディ」でマドンナと共にズッコケたかと思えば「スピード2」ではサンドラ・ブロックを引き立て
00年代には「スパイダーマン」シリーズでトビー・マグワイアを引き立てる
常にウィレム・デフォーといえば、敵役なり、イッてしまっているアブない役と、主役を引き立てるスパイスのような存在意義である。

だが、ようやくそのウィレム・デフォーに相応しい主役が巡ってきた。
今作は彼の代表作と呼ぶに値する素晴らしい出来栄えで、彼の目元が孤独なハンターとよくマッチングしている。

今作がプライムタイムでオンエアされる可能性は非常に低い。
オンエアされるとすればミッドナイト枠が関の山だ(とはいえ、ここ数年、週末の深夜に映画を放送してくれることは著しく少なくなってしまったが)
話が少々脱線したが、今作がプライムタイムでオンエアされる可能性が低い、その主たる理由は2つ
「音声が少ない」
「激しいアクションもない」
深夜に放映されたとしても、寝そべりながらいつの間にか眠ってしまうような側面も持ち合わせている。
標的である「タスマニアタイガー」を追跡するサスペンスのエッセンスも作品紹介が言うほどの盛り込みもない。

今作にあるのは1つは「最小限の会話」、そしてもう1つは「雄大なタスマニアの自然」
最小限の会話だから、今作のBGMの曲は耳に残る。
久々に聴いたことが最たる理由なのだが、ブルース・スプリングスティーンの「I'm on fire」に、主人公と宿の女の心と心が近づいていく曲としてドキドキしながら鑑賞したし、音楽が物語を代弁している。
曲名は失念したが、庭中のスピーカーから流れるクラシックの曲にも心を高揚させられた。

とかく、登場人物のプロフィール、生い立ちが説明不足である。
主人公、宿の女、近所の親父(サム・ニール)などなど、彼らがどういった経緯を経てこの物語のこの場面に現れてきているのかが説明がとても少ない。
それを不親切と受け取るか?
それともイマジネーションを膨らませる為の楽しみと受け取るか?
今作の評価は前者と後者で大きく二分されると思う。
私自身は観賞直後は前者派だったのだが、家路までの会話、そして観賞から1ヶ月以上を経過した今では後者派

主要登場人物は押し並べて孤独である。
孤独が故にその孤独を自らの感情の奥底に封じ込めているであろう主人公
孤独な生き物として登場するタスマニアタイガー
主人公が遂に発見してしまうタスマニアタイガーのシーンに我々観客は気分を高揚させられることなく、寧ろ「とうとう二者が出会ってしまった.....」という哀しみを覚えてしまった。
そう、今作の要諦は「孤独」にある。
それもタスマニアの自然が神々しいまでに美しく、その美と孤独が比例しているからこそ彼の孤独が陰惨なものとして映らない、艶っぽさも意図的に薄めているのだと推測するのだが、ストイックな孤独

最後のシーンで宿の女の息子とハンターが再会する
息子の口から声が発せられるがその声は観客には聞かせない。
素晴らしい終わり方。






0 件のコメント:

コメントを投稿