2012年8月2日木曜日

新・平家物語 くりからの巻



木曾義仲を中心にした物語となる。
平家から源氏へ政権が移る中間に存在した覇者の物語
彼が信濃から北陸を経て京に入って行くまで。
武辺の人でありすぎ、また無邪気な人であり、同時に無頓着な人でもある。
こういう無垢であり、同時に野蛮な人が、策士の行家とは協調していくことは難しい。

木曾義仲に対して、あまり好意的な感情が湧いてこない。
こういうタイプに人は私の周囲にもいる、体育会系の自己中心的な人。
そんな人とはどうしても肌が合わないので、読むペースも上がらない。

斎藤実盛の忠義が美しい。

『本文より』のコーナー

行家のことをバッサリと言い切る頼朝の書簡

いわゆる獅子身中の虫と申すべき軽薄な士で頼朝の迷惑もひとかたではない。
(9巻23頁)

そうなのである。
「そう」とは平家から戦を仕掛けたことはないということ。

もとより戦は平家の好むところではない。従来いつどこに起こった戦いでも平家方から手出しして起こした例は一度もないのである。
 (9巻28頁)

時忠の印象が随分と変わった。
只のヤンキー兄ちゃんが、幾つもの修羅場を乗り越えて大きな人物に変わっていくような印象

むかし鶏持ち小冠者と呼ばれた頃の不良少年魂が良く磨かれて元来のふてぶてしさに、学問と気品を加えたものが今日の時忠であった。
(9巻42頁)

頼朝と義仲の人物比較
確かにズケズケ文句を言われても、それが尾を引かないように聞こえる人がいる。
この点に関しては、義仲に対して好意を感じる

義仲に比べるとおなじ甥でも鎌倉の頼朝ははるかに行家に対して慇懃だし、扱いも応対も物柔らかで丁重である。
だが時によるとその頼朝の温言にはむっと腹が立ってくる。そして意趣遺恨の根にもなるのだった。
ところが義仲の場合は今のような毒舌にかけられてもなんとなく腹は立たない。
(9巻134頁)

【収録】
揺れ山吹
質子
御車返し
龍爪
仙童
虹に染まる手
耳遠き武者
燧合戦
にらみあい
美しき奴隷
倶利伽羅迷路
火牛
半弓禍
将軍と長き黒髪
軍婢
若やぎの壺
安宅・篠原
実盛最期
入洛布石
閨房陣
堂上堂下
痴夫と剛妻
かれの国造り
前夜相


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